・秋以降も続く隠れダニシーズン。活動条件は「温度25〜30℃・湿度60〜80%」
ダニの活動には温度25〜30℃・湿度60〜80%が最も好条件です。近年の住宅は高気密・高断熱化が進み、冬でも室温が20℃前後、暖房や加湿器の利用で湿度が60%前後になることもあり、まさに「人に快適=ダニにも快適」な環境ができています。特に寝具やソファ、カーペットなどは人の体温と汗により局所的な温室となっています。こうした部屋の中の環境に加えて、気候変動により秋でも湿度が下がらない日が多く、夏に増えたダニがそのまま生き残る“隠れダニ”シーズンも続いています。
・衣替えでアレルゲンが舞う。収納前の乾燥・駆除がポイント
通気の悪い押し入れやクローゼットでは湿度がこもりやすく、収納前に乾燥や駆除が不十分だとダニが繁殖しやすい環境になります。その結果、ダニの死骸やフンといったアレルゲンが取り出し時に空気中へ飛散し、喘息や鼻炎の悪化につながるおそれがあります。
・「やったつもり」になりがちな対策も。正しい温度・乾燥や適切な対策グッズを意識して
布団を干せば安心と思っている方も多いですが、天日干しでは表面温度は40℃程度で、ダニが死滅する50〜60℃には届きません。さらに、布団を勢いよく叩く行為は、死骸やフンを空中に舞い上げるため逆効果です。布団乾燥機や掃除機を併用し、内部まで熱を通すことが重要です。さらに、衣替えで使いがちな虫食い防止を目的とした防虫剤ではダニには効果がないため注意が必要。加熱乾燥+ゆっくり掃除機+湿度管理を軸にした対策、そして適切なダニ対策グッズの使用が欠かせません。
・“秋冬も油断できない”。暖房・加湿で再び活動、喘息の背景にも
秋以降にダニを放置すると、冬の暖房・加湿によって再び活動が活発になります。布団・枕・マットレス内部やカーペット、ぬいぐるみなどは体温と湿気で60%前後の湿度が保たれ、繁殖が続きやすい局所的な温室になります。特に寝室は見えない湿度ポケットが多く、見過ごしがちな観葉植物の鉢周辺も注意が必要です。こうした環境がダニの数や死骸・フンを増やし、喘息や鼻炎などアレルギー症状の悪化につながると考えられます。秋冬もダニは生きているという意識で、通年の対策を続けることが大切です。
鈴木 慎太郎准教授 プロフィール
昭和医科大学病院(東京都・品川区)
呼吸器・アレルギー内科 医師
昭和医科大学 医学部
医学教育学講座・医学教育推進室 准教授
呼吸器内科専門医・指導医
アレルギー専門医・指導医
総合内科専門医・内科認定医
一般社団法人アニサキスアレルギー協会理事。喘息、花粉症、食物アレルギー、動物・昆虫アレルギー、薬物アレルギーなど、さまざまな分野のアレルギーに精通している。昭和医科大学病院には日本全国からアニサキスアレルギーはじめ、多くのアレルギー患者が来院し、専門外来で日々診療にあたっている。